中国山地幻視行~羅漢山・うららかな陽を浴びて [中国山地幻視行]
中国山地幻視行~羅漢山・うららかな陽を浴びて
西中国山地に登ると山口県境のわずかに西、気になる山がある。羅漢山(1109㍍)である。羅漢とは阿羅漢、すなわち修行を極めた僧のこと。厳しさと激しさを想像させるが、お椀型で遠目にはなだらかな印象だ。頂上には塔のようなものが立っている。
この羅漢山に4月4日、登った。空は雲一つなく気温20度前後。申し分のない天候だった。吉和へ向かう道を左折して県境を越え、里道をしばらく行くと別荘の分譲地が現れる。車を置き、山道に入る。山頂まで約2㌔。中間点あたりにキャンプ場跡がある。どういう経緯ででき、廃屋になったかはよく知らない。そこを過ぎると、にわかに冬枯れた景色が広がった。
男岩と名付けられた岩が現れる。やがて笹薮の直登になった。苦しいことこのうえない。両側の笹や木の枝をつかんで体を引き上げる。しかし、直登が永久に続くわけもなく、傾斜は緩やかになった。
枯れた林の向こうに白いドームが見えた。国交省が設置した雨量観測用のレーダーである。遠目に見えたものは、これであった。山頂広場には展望台があった。北方面を望むと、西中国山地の名だたる山が並ぶ。山口県の最高峰、寂地山。その東に吉和冠の特徴ある山容。その東に相似形をした恐羅漢。その東に大きくてなだらかな十方山…。
家族連れが別ルートで登ってきた。もう十分に、うららかな陽を浴びた。そろそろ下山にかかろうか。