中国山地幻視行~大峰山・春まだ浅き [中国山地幻視行]
中国山地幻視行~大峰山・春まだ浅き
2月27日、大峰山。
登山口に車を止め、杉林を抜けて最初の休憩地に着いた。ちらほらと舞う雪を受けて、二つのベンチは長方形に白くかたどられていた。座ってしまうのも惜しく、写真を撮ってザックを置いた。男性が一人おりてきた。「山頂は雪ですか」と声をかけた。「雪です」「でも、午後には解けるかも」とのこと。
座っていると北からの風が、氷の中を抜けてきたかのように冷たい。まだ日差しはなく、見上げた空はどんよりとしていた。たまらず歩き始めた。中間点あたりで、待望の日差しがさし始めた。薄雪をかぶった杉林に陽が当たり、絵画のように美しかった。
山頂から北を眺める。吉和冠は雪をかぶっているようだ。西へ目を転じる。山口県内に端正な三角形の山。莇が岳(1004㍍)であろう。この大峰山が1050㍍だから、ほぼ同じ標高の頂を持つ。南にのうが高原。山頂付近に道路が蜘蛛の巣のように張り巡らされている。メガソーラーだ。かつてはレジャーホテルがあったが(昔泊まった記憶がある)、今は廃墟になっているらしい。
山頂は陽光が降り注いだ。冷たい北風が春まだ浅き、を思わせた。
右のこぶ状ピークが頂上
中国山地幻視行~三倉岳・様変わりしていた [中国山地幻視行]
中国山地幻視行~三倉岳・様変わりしていた
三倉岳に登った。いつものAではなくBコースを選択した。青空が広がった2月12日。前回10月の登山で、縦走路のロープが外されていたからである。危険個所として認識されていたのは、中岳から夕日岳に至るキレットと頂上手前の壁。歩いてみて分かったが、そこが大幅に補修してあった。事故の確率は減ったと思われる半面、フィールドアスレチックの趣となり、山に登る醍醐味は少なくなったともいえる。
しかし、これだけの補修には相当の努力が必要で、かかわった人々の事故を防ぐ・安全第一の気持ちも、当然理解できる。悪態よりまずは感謝をすべきだろう。
ふもとの駐車場に車を置き、A、Bコースの分岐点へ。細かい注意書きが目に付く。体力に応じて引き返すなどしてくださいとある。ここでBコースを選択。あとは急な石段登りが続く。いつもなら、ところどころの壁でクライミングに興じる姿が見られるが、なぜかこの日はだれもいなかった。
1時間余りして朝日岳と中岳の分岐。尾根の向こうから吹き渡る風が冷たい。小さな壁が現れる。以前から鎖と「コ」の字型の金具は取り付けてあったが、これが大幅に増えていた。さらに上部に行くと、今までなかった箇所にも鎖が取り付けてあった。
中岳を過ぎ、この山の最大の難所、夕日岳直下の壁。ここも鎖と金具が大幅に増強されていた。これまで、溝(ルンゼ)状の箇所にはシンプルに長い鎖一本が取り付けてあったが、短い鎖が何本も続く仕組みに。新しい「コ」の字金具も目に付いた。鎖を持つ手が滑ると、結構下までずり落ちるという恐怖感があったが(積雪期など特に)、今はとりあえずつかむところがある、という感じだ(その分、面白みはないが)。
夕陽岳の頂から周囲を眺める。靄っていたが、山々の表情は変わらなかった(当たり前か)。