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中国山地幻視行~深入山・冬と春の間 [中国山地幻視行]
中国山地幻視行~深入山・冬と春の間
3月20日、久しぶりに島根県境近くの深入山(1153㍍)へ向かった。雪も解けているころ、と期待してのことだった。
南登山口の駐車場に車を置いた。案内所はべニア板で冬囲いしたままだった。山は冬枯れの木々が立ち尽くし、草原は勢いを失っていた。手元の気温計を見ると20度は優に越していたが、北から冷たい風が吹き付け、体感温度は低かった。冬ではないが春でもなかった。翌21日は春分の日。
枯れた草原へ足を踏み出した。少し経てば、あたりは新緑でおおわれることだろう。振り向けば、広島県内最高峰・恐羅漢山が雪を頂いて立っていた。半月後あたりに登ってみよう。そのころ、雪は消えているだろうか。
山頂に着くと、しばらくしていくつかのグループが登ってきた。相変わらず北風が冷たかったが、にわかに付近は賑やかになった。一人が小さなドローンを持ってきていた。山頂広場は、飛ばすにはちょうどいい。そう思いながら見ていた。
「この風で、落ちたりしませんか」
「いや、大丈夫です。マニュアルによると10㍍ぐらいは平気らしいですから」
たしかに、この日の風速は10㍍はなさそうだった。
山頂から北側へ回りあずまや横を抜けると、100㍍ほど山道は残雪に覆われていた。あとは春の日差しを浴びた、快適な落ち葉の道だった。
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