中国山地幻視行~大峰山・やっぱり夏は暑い [中国山地幻視行]
中国山地幻視行~大峰山・やっぱり夏は暑い
この日、駐車場で気温計を見ると30度。予想より低かったが、別荘地の舗装道では照り返しが厳しい。杉林に入るとほっとした。樹間を抜ける風が心地いい。だが、それもつかの間。昔のようにはいかない。木漏れ日が熱風を運んでくる。汗が滴る。しかし、ここで辛抱すると熱中症が怖い。休憩を取り、水分を補給する。おそらく、いつもの倍ぐらいの時間がかかった。
山頂は岩と濃い緑と夏の雲の競演。いいなあ、山は。でもやっぱり夏は暑い。今度は涼しいときに来よう。
中国山地幻視行~深入山・久しぶりの晴天 [中国山地幻視行]
中国山地幻視行~深入山・久しぶりの晴天
南登山口の駐車場に車を置き、斜面に取り付いた。新緑が目に染みる。気温30度。風があり、暑さは気にならなかった。ツアー客10人ほどが先行していた。
この山は8月になると百花繚乱になる。今は端境期。山道の両側にウツボグサが盛期だが、地味な花である。ササユリは終わりに近かった。風雨にさらされ、花弁は傷ついていた。その中から比較的整ったものをカメラに収めた。風に揺れるギボウシの隣に見かけない花?(写真参照)。登山口の案内所でも聞いたが名前は不明だった。
山頂で周囲の山々を眺めていると「あれは聖湖?」と聞く年配女性。「そう、左が聖山。右が高岳」と説明した。すると「もうすぐ常念へ行くんですよ」と楽しそうに話した。「どちらから?」と聞くと「燕山荘に泊まって…」という。「では中房から合戦尾根を登って、表銀座縦走ですね」と聞くと、少し戸惑って「そうみたい」という。友人数人のグループで、日程とコースは任せきりのようだった。それでも、ひとしきり北アルプスの話。「いいですね」で締めくくった。
山を下りると案内所で地元産のアイスクリームを食べ、体を冷やした。うまかった。花名を確かめたのも、この時である。
*ギボウシの隣にあった見かけない花?は、BUNさんの指摘により「オオバギボウシの蕾」と判明しました。
山岳美と厚みのある人生ドラマ~山の映画館 [山の図書館・映画館]
山岳美と厚みのある人生ドラマ~山の映画館
「帰れない山」
北イタリアのモンテ・ローザ周辺を背景に、出会った二人の少年の友情、父との確執、生き方の模索が描かれる。「国際的ベストセラー小説」とのことだが、原作は未読。稜線の風景は美しく、かといって背景は美しいがドラマは貧弱…といった、ありがちな山岳映画ではない。一方で、長尺の割にところどころ説明不足の感があるのは、作り手が原作に頼りすぎたせいか。読んでいれば補完され、面白さは倍増したかも。
イタリア・トリノに育ったピエトロ(ルーボ・パルビエロ)は両親とともにモンテ・ローザ山麓グラーノ村で夏を過ごした。そこで牛飼いをしている同い年の少年(12歳?)ブルーノ(クリスティアーノ・サッセッラ)と仲良くなる。ある年、山好きの父ジョヴァンニ(フィリッポ・ティーニ)は二人を連れ、氷河に向かった。途中で村人に「子供連れは危険だよ」と忠告を受けながら…。大きなクレバスを、父とブルーノは飛び越えたがピエトロは高山病で越えられず、3人は引き返した。そんな気まずい体験から、ピエトロは山から遠ざかる。父はブルーノとたびたびモンテ・ローザの山々を歩いた。
ジョヴァンニは、教育を受けさせるためブルーノを引き取りたいと考えていた。しかし、ブルーノの父が拒絶したため、建築現場で働く。一方、ピエトロは父への反発から大学へ行かず、アルバイトで暮らした。そんな折り、父の急死の報が届いた。ピエトロ31歳、ジョヴァンニ61歳だった。
父はモンテ・ローザの稜線に山小屋を建てる計画を持っていた。その夢をピエトロ(ルカ・マリネッリ)とブルーノ(アレッサンドロ・ボルギ)に託したのだった。建築技術を持つブルーノの主導で小屋は建てられ、牛飼い経験を生かして牧場とチーズ作りが始まった。ブルーノは山の民になった。ピエトロはチベットなどを訪れ、細々とだが本を出版した。この世界に「いどころ」を見つけたのだ。しかし、ブルーノの人生は平たんではなかった。借金が生活を圧迫した。ある年の冬、連絡が取れなくなった山小屋に救援ヘリが向かう。ブルーノは不在だった。
タイトル「帰れない山」には解説がいる。原題「Le otto montagne」は、直訳すると「八つの山」。古代インドの世界観で、中央に須弥山という一段高い山、周辺に八つの山がある。映画でもチベットを旅したピエトロがこの話をする。須弥山は一度登ると降りることができない。途中で降りたものは周辺の八つの山を永遠に放浪するとこになる、こんな話だった。ブルーノが登っているのは須弥山、つまり「帰れない山」でピエトロは八つの山を放浪している、こんな人生観を暗に語っている。
ラストシーン。雪解けのころ、鳥が亡骸をついばむ。ピエトロがチベットで聞いた鳥葬を類推させる。このシーンとタイトルから、物語の背景に仏教的無常観があることが分かる。
2022年、イタリア・ベルギー・フランス合作。監督フェリックス・バン・ヒュルーニンゲン 、シャルロッテ・ファンデルメールシュ。原作パオロ・コニェッティ。
でもまあ、あんな景色のいいところに小屋を建てて、自給自足で生活できたら、というのは夢ではありますね。モンテ・ローザとかドロミテとか、一度は現地で見てみたい。