中国山地幻視行~吉和冠・黄砂のベール [中国山地幻視行]
中国山地幻視行~吉和冠・黄砂のベール
4月18日、吉和冠
山頂で遅めの昼食をとっていると女性の二人組が登ってきた。随分元気そうで、そのあたりを歩き回り、記念写真を撮るとさっさと下りて行った。
以前登ったのは2021年12月半ば。2年と4か月ぶりの山になる。随分きつく感じた。かつては雪山に挑戦したこともあるが、若い女性の二人と比べるまでもなく、老いを実感せざるを得なかった。
この山に登るたび思うのは「ハナのなさ」である。「ハナ」は植物の「花」より「華」が近い。途中で展望はなく、変わった地形にも出会わない。それでも登ってきたのは、森の深さと巨木のたたずまいにひかれてであった。
この日は朝から「黄砂、黄砂」とテレビの予報が叫んでいた。悪い予感がしたが、山頂近く見晴らしのきく崖上に立つと、いやというほど実感させられた。いつも見える十方山、恐羅漢山は黄砂のベールの向こう。その奥にあるはずの深入山の展望など望むべくもなかった。左手の島根県側から冷たい北風が吹きつける。早々に退散した。
中国山地幻視行~恐羅漢山・冬と春の間 [中国山地幻視行]
中国山地幻視行~恐羅漢山・冬と春の間
4月1日、恐羅漢山。
駐車場に車を止めると、冷たい風が吹き降りてきた。スキー場のゲレンデ上部に目をやると予想外の残雪。しかし、もう4月。予報は快晴。カンジキは持たず、斜面を登り始めた。
ゲレンデ横の急登も所々で雪に阻まれ、時間を要した。林間を抜け、山頂直下の緩い斜面に入ると、残雪は一面を覆っていた。春の腐った雪。油断すると空洞を踏み抜き、膝上まで埋まる。慎重に足を運んだ。
広島・島根県境、標高1346㍍の山頂は日当たりがよく雪はなかった。大きな岩の上から四方を見渡すと、白くかすんでいる。もやっているのか、それとも黄砂か。木々は新緑には早く、枯れ枝が冬の荒涼を漂わせていた。
昼飯をすますと、下山路の思案。いつもなら夏焼峠を回って帰るが、この日は登りで意外に時間を要した。峠回りも、雪があるのかないのか判断がつきかねた。そんなわけで、登った道を下った。人工降雪機がそのまま残っているのも「祭りの後」を思わせて寂しげだった。