中国山地幻視行~道後山・寒気と青空とイワカガミ [中国山地幻視行]
中国山地幻視行~道後山・寒気と青空とイワカガミ
関東一円の季節が逆戻りしたと報じられた5月23日、中国山地で同じ目にあった。かねて予定していた広島県北・道後山(1269㍍)へ。イワカガミが見ごろ、と目算を立ててのことだった。予報は前夜に崩れるものの当日は晴れと出ていた。
駐車場に車を置き、見上げた岩樋山(1271㍍)の頂上付近はガスに包まれていた。それは秒速で広がり、駐車場まで降りてきた。ぽつりと雨粒。迷ったが、ここまで来て帰るわけにもいかないと思い直し(自宅から片道100㌔以上ある)、身支度を整えた。歩き始めると雨は本格化した。たまらず途中の休憩所でザックカバーをかけ、アウターを着込んだ。泥で滑る山道を慎重に登った。
岩樋山の山頂付近に、目当てのものはあった。時期は外していなかった。そこかしこに小さなピンクの花弁が、競うように開いていた。下を向いて歩いたので気づかなかったが、周囲の山々は相変わらず霧の中だった。岩樋山から隣の道後山まで、雲上のプロムナードである。アップダウンは苦にはならなかったが、北からの寒風が確実に体温を奪った。気温計を見ると10度ほど。体感はそれより数度は低いだろう。
道後山で昼食をとった。頭上の雲が切れ、青空がのぞいた。しかし、北東へ直線距離で44㌔の位置にある大山の山頂はガスの中だ。風は相変わらず冷たい。上空に寒気団が入り込んでいるのだろう。寒気と日差しが交互に訪れる、忙しい天候はしばらく続いた。
中国山地幻視行~船通山・カタクリはまだ咲いているだろうか [中国山地幻視行]
中国山地幻視行~船通山・カタクリはまだ咲いているだろうか
島根・鳥取県境の船通山(1142㍍)に5月9日、向かった。目当てはカタクリの花だった。時期は明らかに失していた。例年なら4月末か5月初め。しかし、今年のGWは悪天続きだった。人出も多く、駐車スペースもないだろう。そんなわけで、時季外れの山歩きとなった。
予報をにらんで決めただけあって、この日の天候は最高だった。中国山地を走る車から見る新緑は輝いていた。
広島県から183号を通り、鳥取県日南町から山腹に入った。予想通り? 車一台いない。駐車スペースは貸し切り状態だった。「熊に注意」の看板を横目に山道に入った。いきなり長い階段状の道。歩幅が調整できずつらい。汗が噴き出る。見上げれば、新緑が美しい。季節は夏間近を思わせた。スプリング・エフェメラル(春の妖精)とも呼ばれるカタクリはまだ咲いているのか。つい不安になった。
頂上直下の急登。いつもならここで見つけるのだが…と思いつつ、足元に目をやる。あった。数は少ないが、あった。風雨のせいで花弁が傷ついている。ところどころに一輪、一輪。
山頂広場。盛期なら無数に咲く紫の花は、ぽつりぽつりとしか咲いていなかった。しかし、もう終わっているかもとあきらめていたので、うれしくもあった。
北東の方角、約40㌔に大山が見えた。その上の空は青く突き抜けていた。雲一つなかった。
右はハイキングコース、左は直登コース。迷わず右へ行く
長い階段。歩幅が合わずつらい
山腹をトラバースする道に出て一息
見上げれば新緑がまぶしい
山頂で見つけたカタクリの花。風雪の跡が痛々しい
カタクリの花
大山を望む
正面に大山。わかるかな
出雲方面を望む
長い石塔には「天叢雲劒出顕之地」とある。スサノオが八岐大蛇を退治し、
尾から出た劔を天照大神に献上したという古事記の記述に基づく