山の図書館~「ヒラリー自伝」(E・ヒラリー著) [山の図書館・映画館]
山の図書館~「ヒラリー自伝」(E・ヒラリー著) |
1975年、エヴェレストの初登頂者ヒラリー卿が来日。案内をしたのが吉沢だった。なぜヒラリーと面識があったのか。多くの著作の翻訳者でもあったからである。
この年「山と渓谷」に寄稿した吉沢の文章から。
「開けっ放しの性質が行間ににじみ出ている、ということである。つまりケチケチしたずるさがないということにもなろうか。彼はいわゆる芸術家でも学者でもない。早く言えばエヴェレストへたまたま一番乗りをした蜂蜜屋の兄ちゃんであった」(「自伝」から引用)
自伝にはヒラリーの写真が何枚か収められている。「ヴィクトリアで名誉法学博士号を授けられるヒラリー卿」は、吉沢が描くそのままの横顔だ。
「ヒラリー自伝」(草思社) |
しかし当然のことながら、ただの素朴な男ではない。登山に関しては精緻な記録を紡いでいく。
「四分の三入っていたボンベを使い切ったので、それを棄て、今度は軽い九㌔のボンベをつけた。(略)我々は1分間に3㍑ずつ吸った。(略)高度を上げないようにして、固く凍った雪にステップを切りはじめた」。「ついに私は、とびきり大きな瘤の背にステップを切り(略)ゆるい雪稜を登りきった。目標に到達したことがすぐに分かった。(略)エヴェレストの頂上に立ったのだ」
ヒラリーは自伝の後半で次のように書く。
「これまで私は新しい冒険を見つけるのに苦労したことは一度もなかった。いちばん苦労したのは、それを実行する時間を見つけることだった」
原題は「NOTHING VENTURE, NOTHING WIN」。「冒険のない人生なんて」とつぶやいているようだ。たまたまエヴェレストがそこにあったから、と言っているかのようなニュージーランド生まれの男の人生がある。
2009-11-21 15:58
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コメント(2)
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ご訪問&nice有難うございました
山登りの体力はありませんが 憧れます
by 鶴 (2009-11-21 23:59)
鶴さん、コメントありがとうございました
by asa (2009-11-22 08:05)