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中国山地幻視行~三倉岳の憂鬱 [中国山地幻視行]

 中国山地幻視行~三倉岳の憂鬱

 広島県の西部、廿日市市と大竹市の奥まったところ、屏風のように三倉岳(702㍍)が立つ。恐羅漢山や十方山、吉和冠山、それに山口県側の寂地山が西中国山地の核心部だとすると、三倉岳はこれらの山域の前衛峰の位置にある。例えばジャンダルムが怪異な風貌のゆえに奥穂の前衛峰と呼ばれるように、といえばいいだろうか。
 
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 西岳直下から見上げる三倉岳



 確かに三倉岳は中国山地の中では特徴的な山ではある。中国「山脈」ではなく中国「山地」と呼ばれるこの地域にはなだらかな山が多いが、その中で三倉岳は個性的な岩峰である。他の山域からこの山を見ると、すぐに判別できてしまう。それは北アルプスでの槍ヶ岳の存在のようでもある。他の山と決して一体となることのない槍ヶ岳と同じ孤独を抱える山、といえるのかもしれない。
 ただ、ジャンダルムのように「怪異」な風貌かといえば、それも違う気がする。むしろ仙人池から見た裏剣のような峻烈さがあると言えば、ほめすぎになるか。裏から見た剣岳は、実は「剣」が天に向かって何本も立つ光景であり「剣岳」の名の由来がよくわかる。それに似て、三倉岳も三本の槍が立つ光景に似ているのである。
 
三倉岳_0137-4.JPG

 中岳から栗谷地区を望む。空はすっかり秋



 この三倉岳に久しぶりに向かった。何ヶ月ぶりだろう。といっても、この山の頂に立つのは数十回、いや3けたに及ぶかもしれない。
 3本の槍がそびえる形からして、ルートと登山スタイルはかなり限定される。すなわち、階段状の道をひたすら登る。高度は面白いほどかせげるが、樹木に覆われて周りの景観は見えない。頂上付近に到達しての楽しみにとっておかねばならない。
 この日は午前9時前に出発、約1時間で中岳に着いた(3本の槍があるということは、頂は三つあるということでもある)。週末なら幾人かに会うはずだが、この日はウイークデーだったため誰もいない。キレットを風が渡る音のほかは、何も聞こえない。というよりも、ものすごい静寂だ。
 いつもの通りキレットを越えて西岳の頂上へ。登山口からここまで1時間半。しばらく「下界」を眺める。日差しはきついが、空はすっかり秋の色をしている。
 この山、実は夏よりも冬が味わい深い。だから雪の降るころ、いつも訪れる。雪が深すぎるとルートが見えなくなってしまうのが欠点といえば欠点だ。登山路を外れると、気付かないうちに絶壁の淵に出てしまう恐れがあるのである。慎重に動かなければならない。西峰からの下りの途中に大きな岩があるのだが、ここからの眺めが最高だろう。雪をかぶった岩峰が、花が咲いたように華やぐ。 
 
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 天狗の踊り場から大野権現(右のとがった頂)方面を望む=2008年1月1日

 
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 西岳直下から、雪の三倉岳=2008年1月1日

 

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