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北アルプス幻視行~槍ヶ岳よ≪1≫ [北アルプス幻視行]

北アルプス幻視行~槍ヶ岳よ≪1≫

 

 「それは悲しいまでにひとり天をさしている」と書いたのは、深田久弥である。

 槍ヶ岳。北アを歩くと、その存在がいつも気になる。視界に入れば「あっ槍ヶ岳だ」と思ってしまう。歌人の窪田空穂はその姿を「奇怪」と形容したが、「孤高」という言葉を触媒にしてみれば「悲しみ」と「奇怪」にそれほどの落差があるわけではない。なにものにも交わらぬ孤高は、見る者の心情によって悲しみでもあり、奇怪でもある、といえる。

 4度目の槍ヶ岳登頂を試みた。1度目は槍沢。2度目は東鎌。3度目は西鎌。そして槍沢。初心に戻ってといえば聞こえはいいが、もう他のルートを登り切る気力も体力も失せてしまった、というのが正直なところだろう。

 7月25日、河童橋から見上げた穂高はガスに包まれていた。気のせいか、河童橋まで陰鬱な表情に見えた。きょうは槍沢ロッジまで歩かねばならない。空よ、夕刻まで不機嫌な表情は見せないでくれ。

 
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河童橋。穂高はガスの中だった 

 
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ショウキランというらしい。上高地から横尾への道で見つけ、覗き込んでいると、通りがかった登山者が教えてくれた


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