旅におぼれて~スペイン断章Ⅵコルドバ・文明は衝突する [旅におぼれて]
旅におぼれて~スペイン断章Ⅵ
コルドバ・文明は衝突する
どこにもないものを壊してどこにでもあるものにしてしまったのか。それとも、どこにでもあるものを寄せ集めてどこにもないものを作ったのか。
アンダルシアの風が吹くコルドバは早くからイスラムの脅威にさらされた。盛期には北アフリカと南欧を睥睨する都市として人口100万、モスク300を数えたという。しかしレコンキスタによってキリスト教圏に奪還され、都市としては衰退する。そんな中でメスキータ(モスク)は3度の拡張と変貌を遂げる。
冒頭の言葉、前者はカルロス5世の嘆きである。しかし今、観光資源としては後者の見方のほうがもてはやされている。
いうまでもなく日本人は八百よろずの神であり、新年の祈願は神道、結婚式はキリスト教、葬式は仏教でもなんとも思わない。どんな神であろうと、神であれば抱きしめる。しかし、唯一絶対神を信じる民はそうはいかない。そんなわけで、コルドバの寺院では簒奪の歴史が続いた。それを、ぐるりと囲む分厚い壁が物語る。
イスラムとキリスト教の建築様式が混在するこの巨大なメスキータの内部はしかし、見るからに融合というものがなくグロテスクでさえある。力を持つものの苛立ちのあとだけが刻まれている気がしてならない。
「文明の衝突」を著したS・ハンチントンは、世界は宗教を基礎とした八つのブロックに分かれてぶつかり合うとして「9・11」を予言したが、その歴史的現場がここにある、といえるのかもしれない。
2012-04-04 01:43
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コメント(2)
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荘厳な雰囲気の教会。まったく宗教心もない
僕でも粛然とした気持ちになる場所です。
by ken_trekking (2012-04-04 07:30)
≫ken_trekkingさん
カネと労力はかかっている感じですね.
by asa (2012-04-04 23:22)