旅におぼれて~スペイン断章Ⅲトレド・歴史の中空都市 [旅におぼれて]
旅におぼれて~スペイン断章Ⅲ
トレド・歴史の中空都市
マドリッドから南西へ70㌔、荒野の中にそれはある。タホ川に囲まれた小高い丘は、城壁で囲めばそのまま要塞である。こうしてトレドは、ローマ時代から城塞都市だった。6世紀、西ゴート王国の首都となり、8世紀にイスラムに支配され、11世紀にはキリスト教徒によって再征服(レコンキスタ)される。1561年にスペインの首都はマドリッドに移り、トレドはスペイン・カトリックの首座大司教座として位置づけられる。
――カルロス四世及び王妃マリア・ルイーサの戴冠式は一七八九年一月一七日、トレドの大聖堂で行われた。王としての宣誓をうける人は代々トレドの大司教である。このとき、王は四一歳、王妃は三八歳である。(堀田善衛「ゴヤⅡ マドリード・砂漠と緑」)
歴史にほんろうされた都市はしかし、その後の近代の歴史から隔絶されたかのようなたたずまいを見せる。そんな街に、一人のギリシア人が漂着する。エル・グレコ(スペイン語で「あのギリシア人」)である。かれはこの地で絵を描き続ける。サント・トメ教会で見たグレコの「オルガス伯の埋葬」は予想以上に大きな絵だったことに驚いた。
キリスト教とイスラム教が覇を競ったこの都市では、宗教を彩るものすべてが豪奢である。宗教は力である、そのことを如実に見せつける。そして今も武装を解かないこの都市は、地形上のみならず歴史の上でも何物にも属さぬ、中空の位置にあるかのようだった。
2012-03-31 12:23
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コメント(2)
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やはり写真はあの場所からですね。!(^^)! また行ってみたくなりました。
by Jetstream777 (2012-04-02 23:22)
≫Jetstream777さん
何もないところからいきなりこんな街が現れると「おっ」と思いますね。やっぱり最初のカットはこうなりました。
by asa (2012-04-04 01:31)