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中国山地幻視行~残雪の大山 [中国山地幻視行]

中国山地幻視行~残雪の大山

 

 残雪期の大山に登った。昨年は3月下旬に登り、雪が少なく、ガスのため視界も悪く、楽しみの少ない登山だった。ことしはそれを帳消しにするような豊富な雪量と、すかっとした晴天だった。

 大山寺近くの下山キャンプ場に着いたのは4月1日午後5時過ぎ。出入口は雪で覆われ、使用不能だった。仕方なく近くの駐車場に車を入れた。トイレ完備、無料(3月までの冬季は有料)である。看板にはテント張り禁止とある。やむなく、荷台に寝る。とはいっても車は後部シートを倒せば、十分に手足を伸ばして寝ることができる。こんなことならマットを敷いておけばよかったと後悔。

 翌2日、午前5時には目覚める。空を見上げると満天の星。天気は良さそうだ。コーヒーを沸かし、朝食の準備をしているとはや時計は6時を指している。身支度を整え、出発は6時半。

 夏道登山口からいきなり雪道。早朝のため雪は固い。しばらく歩いてアイゼンを装着。しっかり食い込み、快適だ。踏み跡をトレースすると、本来の登山道ではなく林間を直登するルートに変わった。スリップすれば一気に落ちそうな急傾斜が続くが、その分、高度は稼げる。この時季にしては、雪が多いと言っていいだろう。

 6合目まではしっかりした雪質。しかし、そこから上は日差しが直接当たり、気温も急上昇して一気に雪質が柔らかくなった。アイゼンの刃がずるりと滑る。ロスが大きい。左手には雪の北壁がまぶしいが、疲労もたまってくる。辛抱すると7合目。頭上には大山の緩やかな山稜が伸びる。あそこまで行こう、と気持ちを奮い立たせた。

 いつもの見なれた石碑は雪の下だった。弥山の頂はこんもりした雪の小山だった。振り返れば眼下に弓ヶ浜の緩い弧がうっすらと延びる。その上に広がる空はどこまでも青。頂上小屋は1階部分がほぼ雪の下だった。豊かな雪量を当てにしてか、山スキーを楽しむ人が多いようだ。雪の解けた木道の上に横になれば、日差しがじりっと顔を焼く。すっと眠気が襲う。昼飯の準備を急がねば、とあわてて身を起こす。

 残雪期にこれだけ条件がそろったのは、記憶では2008年3月以来だ。しかし、この山はいったん荒れだすと、人知を超えて猛威をふるう。3月上旬にも、かなりのベテランと目された人たち3人が命を落とした。肝に銘じておきたい。

 
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登る前日の夕刻の大山。舛水の方角から見ると端正なかたちをしている 

 

 
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6合目上部から、北壁を望む。ガラガラと落石が不気味な音を立てている

 
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頂上小屋。眼下に弓ヶ浜が弧を描く

 
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弥山から剣が峰へ向かう縦走路。細い上に崩れやすく、積雪季は滑落が多く特に危険だ

 
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下山途中に見た風景。8合目の上あたり

 
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桜と伯耆大山と青い空


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Jetstream777

最後の写真が素晴らしいですね。 天気もよし、雪山、麓は桜、云うことなしと察します。
by Jetstream777 (2014-04-04 00:43) 

山子路爺

雪があると弥山から剣が峰へ縦走できるのですか?
夏は崩落が進んで危険なため進入禁止だったかと。

by 山子路爺 (2014-04-04 12:27) 

asa

≫Jetstream777さん
おっしゃるとおり、いうことなしでした。

≫山子路爺 さん
写真のキャプションを読み直してみると、冬季は通れそうにもとれます。知ったかぶりでした。もちろん、夏もですが冬はもっと危険です。普通の登山技術のレベル(私もですが)では通行不可です。あとは自己責任で行く人はいるようですね。私が登った時も、踏み跡はありました。かなり高名な登山家も命を落としており、甘く見ると大きな事故につながるルートといえます。
by asa (2014-04-04 14:45) 

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