中国山地幻視行～視界不良・大山：風と歩く：SSブログ

	ブログをはじめるログイン

中国山地幻視行～視界不良・大山　[中国山地幻視行] [編集]

中国山地幻視行～視界不良・大山

　ある人の招きで、鳥取を訪れた。宿は小さな湖に面してあった。東郷湖という。宿があるのは東郷温泉。向かいには羽合温泉がある。最近、ＣＭでも取り上げられている「日本のはわい」である。夜が明けきらぬころ、湖面を眺めた。明鏡止水を絵に描いたような、油を流したような、べったりとした静寂である。汽水湖であるから、水位は干満によって変化する。このあたりの泉源は湖の中央あたりにあるらしい。わく湯は90度もあるという。写真では分かりにくいが、手前左にあるのはシロウオ漁の四つ手網。この辺でとれるのはシラウオでなくシロウオで、呼び方だけでなく種類も違っている。明るくなるにつれ、対岸のしだれ桜が白く浮かび上がった。

　３月29日早朝、宿を出て大山（1711㍍）に向かった。宿から南西方向、60㌔弱。予報では気温14度～9度。最低気温が低いのが気になる。大山寺に車を置くころ、空は晴れて頂上への稜線もくっきり見えたが、登山道にとりついたころにはガスが山腹を包んだ。

　３合目あたりから登山道を雪が覆い始めたので６本刃のアイゼンを付けた。例年に比べ雪量は少ないらしいが、それでも６合目あたりからは本格的な雪道になった。左に見えるはずの北壁もまったく見えず、頂上への稜線も確認できない。

　ようやくたどりついた頂上小屋も、近くまで行かなければかたちも分からないほど深い霧の中だった。このガスの深さ、当初危惧した気温の高さのせいであろう。結局、大山寺に戻るまであたりはガスに包まれたままであった。