中国山地幻視行~大山とカタクリ・船通山 [中国山地幻視行]
中国山地幻視行~大山とカタクリ・船通山
「富士には月見草がよく似合う」とは太宰治の「富嶽百景」で、月見草という小さな存在が富士山と相対して引き下がらぬ凛とした姿への共感をうたった。富士は「日本一の山」といわれるが、さしずめ中国地方一の山は大山であろう。深田久弥の「日本百名山」にも、中国地方からは大山だけが選ばれている。この大山に相対し、一歩も引かぬ存在としてカタクリの花を上げるのは、無謀なことだろうか。
5月2日、広島市内から中国自動車道経由で船通山に向かった。島根・鳥取県境にあり、広島県境にも近い。広島県北の庄原ICから山間を縫い、鳥取県の日南町に入ったところで島根県の横田方面に向かう県道15号を走る。しばらく行くと右手に林道があり、「船通山」の標識がある。まぶしい新緑の中に登山道がある。
駐車場には既に何台かいたが、満車ではなかった。端っこに車を置き、支度にかかる。登山道を10分ほど登ると、「健脚向き」と「一般向き」に分かれる。一般向きを選ぶ。距離はやや長いが、道は整備され歩きやすい。
山頂が近くなったころ、数人の登山者が下りてきた。「カタクリは咲いてますか」と声をかけた。「咲いてますよ」と返事があった。
「満開ですか」
「ええ…、でも今年は少ないみたい、とほかの人が言ってました」
この山の頂上付近は広い草原状で、あたり一面にカタクリが咲く。この花はひっそりと咲く印象があるが、この季節の船通山の景色は、ほかの山のカタクリのそれとは全く違っている。しかし、今年の船通山は「あたり一面」というには、確かにまばらな印象があった。
それでもマクロレンズを、花弁に向ける。寂地山と比べて、船通山のカタクリは紫が濃い。日の当たりかたが違うためだろうか。
一息ついて、周りの山を眺めた。薄い雲があるものの、快晴である。東に目をやると、ひときわ存在感のある山容があった。大山である。頂上から麓にかけ、残雪が筋状に伸びる。船通山の北東、直線距離にして47㌔向こうにある。左には日本海の海岸線があった。この山には、濃い紫の花弁を持つカタクリの花がよく似合う。
カタクリの花、スゴイ大群生ですね。見事です。 これで例年より少ないとは!
by Jetstream (2017-05-04 20:39)
≫Jetstream さん
おっしゃるとおり、この山の群生は他では見られないものです
でも、私の記憶でも、今年はややまばらかな、という印象があります。カタクリも表年と裏年があるそうで、今年は裏年かもしれません
by asa (2017-05-05 10:38)