中国山地幻視行～秋の残骸・恐羅漢：風と歩く：SSブログ

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中国山地幻視行～秋の残骸・恐羅漢

　ひとあし、遅かったかもしれない。広島県の最高峰、恐羅漢山（1346㍍）はすでに荒涼とした冬の衣をまとい始めていた。秋の風情はどこにも残っていなかった。それにしても、この山頂の荒れ果てた風景は。
　平日だが、人は多かった。スキー場の駐車場に車を止めると４人連れの先客。続いて２人連れが車を後ろに付けた。ここからだと、山頂へは二つのコースがある。一つはゲレンデ沿いにひたすら登る。面白くないが短時間で着ける。もう一つは、夏焼峠を回ってＶ字型に登るコース。比較的緩やかだが、長い。
　聞いてみた。二つのグループとも峠回りで登るという。生来が天の邪鬼のため、ゲレンデ直登コースを取った。１時間ほどで頂上に着いた。だれもいなかった。飯を食っているうち、二つのグループが追いついてきた。前後して、カメラバッグと三脚を持った高齢の男性が下りて行った。背後から声をかけた。「もう、紅葉は過ぎましたかね」「そうだね、もう遅いね」
　下山は峠回りのコースを取った。尾根道をたどると冷たい風が身にこたえた。手袋を持ってこなかったことが悔やまれた。少しだけ、紅葉が残っていた。それをなんとか、カメラに収めた。写真はそうして記録した数少ない秋の「残骸」である。