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中国山地幻視行~春の雪・三倉岳 [中国山地幻視行]

中国山地幻視行~春の雪・三倉岳

 夜半から降る雪は氷雨に変わっていた。そのうち日が差してきた。午後には晴れるだろう、という予報だった。3月26日、三倉岳(702㍍)に向かった。この山に登るには標高300㍍余り、高原状の一帯を抜けなければならない。平地では日が差していても、ここまでくると重い雪が舞っていた。

 登山口に着いたのは午前9時過ぎだった。枯れ枝に花が咲いている。確かにそう見えた。雪の花だった。サクラよりもっとはかない雪の花。そういえば、サクラの花もそろそろ咲いていいころなのだが、山の自然は、そんなそぶりも見せないでいる。

 登山道は誰も歩いてはいなかった。まっさらな雪の上を歩いた。少し重めの、真綿のような雪。1時間余りで、いつも座って下界を眺める岩の上に着いた。天上天下唯我独尊。そんな気分が味わえる場所である。しかし、そこでは春の雪が見事な絵模様を描いていた。さすがにそれを、無粋にも踏み荒らすこともできず、昼飯はその岩の下で食った。

 里は桜のつぼみさえなく、梅が遅い花を散らさずにいた。ある農家のそばでは紅梅が見事なたたずまいをみせていた。そばまで寄って写真を撮らせてもらった。背後から「どうした?」と声がする。振り返るとおじいさんが怪訝そうな顔をしている。「写真を撮らせてもらっていました」「もう遅いよ。この梅の木も、もう古いし。もっと早く来なけりゃな」「そうでした。気がつくのが遅かったかもしれませんね」。よく見ると確かに老木である。でも、いい味わいだった。

 紅梅の向こうの空は青かった。気がつくと朝方の雪は遠い昔のことのようだった。

 
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 雪の花が咲く登山道の入り口


 
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真綿のような雪。午後には跡形もなかった

 
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いつもの特等席は春の雪にとられていた

 
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老木の紅梅はまだ花を散らさずにいた


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よしころん

そちらでもまだ雪ですか。
やはり今年は寒いようですね。
by よしころん (2011-03-27 19:57) 

ken_trekking

雪の花がはらりはらりと枝から落ちるさまを
見るのは、なんとも優雅な感じがしますね。
by ken_trekking (2011-03-27 22:02) 

おど

中々暖かい日が続かないので桜はまだでしょうか。 この時期には珍しく低い山にも雪が降っているので、春の本格的な訪れはまだ先のようですね。
by おど (2011-03-27 23:03) 

asa

≫よしころんさん
東日本があのようになったせいもあるのでしょうか。遅い春は列島異変のようにも思えます。

≫ken_trekking さん
雪の花はとてもきれいでした(写真ではうまく出せませんでしたが)

≫おどさん
今年の桜は、明らかに遅いですね。

by asa (2011-03-28 07:04) 

Umi-Bozu

東京も桜の開花宣言が出たようですが、まだまだ寒いです。
by Umi-Bozu (2011-03-28 22:31) 

asa

≫Umi-Bozuさん
東京では開花宣言が出ましたか。こちらではまったくそんな雰囲気はありません。しかし、東京はしばらく大変ですね。サクラどころではないかも…

by asa (2011-03-30 11:21) 

広島ピアノ

白雪と紅梅。
美しいですね。
by 広島ピアノ (2011-03-30 12:35) 

山子路爺

新幹線で通った関が原付近の山にも、かなり雪がありました。
24日25日は岡山も寒かったです。
by 山子路爺 (2011-03-30 19:36) 

asa

≫広島ピアノさん
この時期に雪、やっぱり日本列島どこかおかしいですね。

≫山子路爺さん
あちこち飛び回って大変ですね。関ヶ原あたりは雪が積もるでしょうね。25日は岡山ですか。
by asa (2011-03-31 18:11) 

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