中国山地幻視行～鷹ノ巣・カンノ木 なごり雪

中国山地幻視行～鷹ノ巣・カンノ木　なごり雪 

　花笑むころは花冷えのころでもある。桜が咲き始めたとたん、寒波が襲ってきた。朝から小雨がぱらつき、青空がのぞき、霰が降る。めまぐるしい天気の中を酔狂にも、山に登った。

　３月29日、鷹ノ巣山（922㍍）とカンノ木山（892㍍）。書き始めてあらためて思うが、カンノ木山とは落ち着かない名前だ。地元では「叶」という字をあてる。「叶うの木」が縮まってカンノ木となったのではないか。どこかにご神木のような巨木があったのかもしれない。

　この二つの山は広島県の福富町と向原町の境にある。県の中の位置関係で言うと、ちょうど真ん中にある。そのことから鷹ノ巣山を広島県のへそと言ったりする。どちらの町からも登山道がついているが、ネットで調べた限りでは近年は福富町から登る人が多いようだ。山陽自動車道ができ、車ならこちらのほうが圧倒的にアプローチが便利だからだ。

　ということで、今回も福富町から登ることにした。前回登ったのは数年前。まだ雪深い季節だった。もう３月も終わり、さすがに雪はないだろうと思ったら、どっこいだった。季節外れの寒波で登山道は白く染まっていた。福富町から「県央の森」なる公園を目指す（もちろん、県の中央に位置することを意識してこの名がついている。あくまでも地理的な意味での、である）。公園の手前で車を降り、登山道に足を踏み入れる。暗いスギ林に湿った雪が降り積もっていた。空にはごうごうと風が舞う。取りつき地点で標高は600㍍弱。ここから20分ほどで峠の十字路に着く。標高726㍍。右へ行けばカンノ木山。左は鷹ノ巣山。まっすぐ行けば向原へと降りる。とりあえずカンノ木へと向かった。とたんに急登が始まる。湿潤な雪で足が滑る。30分余りで見晴らしのいい頂上へ出る。森と、なだらかな山並みが広がる。

　来た道を引き返す。もう一度十字路に出る。鷹ノ巣への道はもっと急登だ。カンノ木から１時間弱で頂上。

　鷹ノ巣の頂上は芝が広がって気持ちがいい。着いたとたん、青空が広がり陽が差した。冷気に覆われた草原から水蒸気が立ち上る。その向こうに展望が広がる。中国山地の優しい山並み。頂上付近の木々は朝からの冷え込みで銀色の樹氷をまとっていた。手元の温度計では気温５度。

　ここで昼飯とする。そのあいだにも陽が差し、風が吹き、霰が降り、小雨がぱらつく。なんと忙しいこと。しかし確実に気温は上がり、わずかな間に樹氷も大半が消えうせた。下りの登山道も、雪はどこかへ行ってしまっていた。落ちては解けるなごり雪だった。

 

この樹氷も下山するころにはほとんど消えていた(鷹ノ巣山)

文字通りの「なごり雪」

鷹ノ巣山頂上に日が差すと、あたりに水蒸気が立ち上った

カンノ木の頂上から

鷹ノ巣の頂上から

カンノ木の頂上で

タグ：カンノ木山 鷹ノ巣山 中国山地 登山 山

コメント 8

冬の名残りの素敵な景色ですねぇ　＾＾
東京奥多摩にも鷹ノ巣山があり、やはり急登でした。
by よしころん (2010-03-29 22:22) 

ご訪問ありがとうございます。
中国山地の山を歩かれてるのですね。
私も姫路出身なので、山並みを写真で拝見し、
懐かしい印象を受けました。また、拝見させて下さい。
by KOMKOM (2010-03-29 22:24) 

頂上の水蒸気。不思議な図ですよね。ちょうど先週僕も
季節外れの雪を味わったのですが、同じように日の当たる
狭い場所に水蒸気が。ちょっと目を疑いました。
by ken_trekking (2010-03-29 22:27) 

よしころんさんへ
「鷹ノ巣山」という名前はどこにでもありそうですね。
「カンノ木山」は珍しいのでは。

ＫＯＭＫＯＭさんへ。
単身赴任ごくろうさまです。私も神戸に住んでいたことがありますが、そのころは山に目覚めておらず六甲山しか登ったことがありません。

ken_trekkingさんへ。
水蒸気は珍しかったです。

by asa (2010-03-31 17:03) 

こんばんは。
寒波の中、登山なさったんですね〜　スゴいです。
そんな中、珍しい光景に出会われたんですね。(^｡^)
by yakko (2010-04-02 21:04) 

yakkoさん、久しぶりです
四国では桜がきれいですね。
by asa (2010-04-02 22:05) 

名残の樹氷が輝いていますね。
立ち上る水蒸気の中のむっくりした木に惹かれます。
by 山子路爺 (2010-04-05 19:10) 

山子路爺さんへ
いまどき珍しい樹氷でした。水蒸気の写真はとっさに撮ったので、少しバランスが悪くなりました。
by asa (2010-04-05 20:03)