中国山地幻視行~寂地山・カタクリは咲いていたが… [中国山地幻視行]
中国山地幻視行~寂地山・カタクリは咲いていたが…
犬戻しの滝へ向かう遊歩道の入り口には2台の車があった。この時期としては多くない。横に車を止め、沢のせせらぎを聞きながら身支度を整えた。遊歩道と長い林道を終えて最初の急登を登り、一息ついていると後ろから「ああ、やっと人がいた」の声。こちらも、本日の山中で初めて出会った人であった。どちらともなく「人がいないですねえ」、そして「咲いてますかね」。
4月30日、山口県の最高峰・寂地山(1337㍍)。カタクリの花目当てである。例年ならツアーバスが繰り出す「名所」だが、今年はそんな気配はない。それどころか人と出会うことさえおぼつかない。
山頂の南、右谷山への縦走路の分岐あたりにカタクリの花の群落がある。息を切らし、急登を越えると一面に薄紫の小さな花。咲いていた。いつもの年に比べ花は小さく、数も少ないようだ。山頂への道の両側も同じ印象だった。吉和冠へと向かう縦走路は、もっと寂しかった。少し時期が早かったか。
結局この日、山中で出会ったのはわずか数人。コロナ禍のもと、この時期としては異様な体験であった。