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中国山地幻視行~牛曳・伊良谷・毛無山・紅葉には少し早かった [中国山地幻視行]

中国山地幻視行~牛曳・伊良谷・毛無山・紅葉には少し早かった

 

 中国山地からも紅葉の便りが聞かれるころとなった。そんなとき、頭に浮かぶのが広島県北、牛曳山から伊良谷山を経て毛無山に至る縦走路である。三山とも、標高は千㍍とちょっと。隣接する、出雲峠を越え、烏帽子岩から比婆山、池の段に至るコースに比べ知られていないが、それだけ静かな山歩きが楽しめる。登山口近くには、この地方には珍しい白樺林があり、タイミングがあえば美しい紅葉が見られる。縦走路は深いブナ林が続く。

 1028日、牛曳から毛無への道を歩いた。

 まず、白樺の紅葉。残念ながら、三分から五分といったところ。少し早すぎたようだ。もう10月末、例年ならちょうどいいころと思ったが、全国的に今年は紅葉が遅め。もう1週まてば頃合いだったかもしれない。

 牛曳の山頂近く、分岐に差し掛かるあたり、ブナの黄葉は見ごろだった。あとは毛無への緩やかなアップダウンを楽しんだ。山道に降り積んだ落葉が足に心地よかった。

 毛無山頂には数人の登山客がいた。向かいには比婆連山。振り返れば大山がよく見えた。ここ毛無山頂から大山まで直線距離で5060㌔はある。それにしては、大山のシルエットがくっきりと浮かび上がっていた。ここ数日、秋の晴天が続いているおかげであろうか。

 毛無から六ノ原まで下山路を行く。足元のリンドウが、秋の深さを伝えていた。

 

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白樺林は、まだ紅葉には早かった

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このあたりは見事な紅葉

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牛曳の分岐点

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伊良谷山の標識。なぜかロープが張ってあった。これより先、入るなの意味?

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伊良谷山を越えたあたりから毛無山を望む

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大山がよく見えた

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毛無には立派な山頂標識があったが、今はこんな感じに

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ススキの向こうに比婆連山

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足元にリンドウ

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下山路、六ノ原と出雲峠の分岐


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カールへの旅・錦繍を求めて(下)~北ア幻視行 [北アルプス幻視行]

カールへの旅・錦繍を求めて(下)~北ア幻視行

 

 台風19号が近づいていた。1011日(金)。朝から空は重苦しい灰色をしていた。きょうは横尾から上高地に向かい、自宅に帰るばかりだ。

 河童橋から見上げた奥穂のピークは雲に覆われていた。ひょっとするともう来ることはないかもしれない穂高。少し感傷の混じった気分で、通りがかりの人にシャッターを切ってもらった。

 事態の深刻さに気付いたのは、松本駅に着いてからだった。山ではずっと、ネット圏外の生活で、ニュースなどに全く触れていなかった。

 超大型台風が土曜日から日曜日にかけて東海、関東を直撃するという。そのため、新幹線など交通機関は土曜日から計画運休を構えていた。その前に移動しておこうという人が、松本駅にも殺到していた。みどりの窓口に駆け込むが、すでに新幹線の指定席はないという。いろいろ考えた末、以下のようにした。

 松本―名古屋の特急「しなの」はガラガラだった。上りのためだろう。名古屋から新大阪までは「ひかり」で指定席が手に入った。問題はその先である。新大阪発「さくら」の自由席なら、始発なので潜り込めるかもしれない。駅員のアドバイスに従った。しかし、新大阪のホームは長蛇の列だった。絶望的な気分で末尾に並んだ。

 結局、奇跡的に席を確保できた。広島まで通路は立ち客でいっぱいだった。指定席の車両に移動するよう、車内アナウンスが繰り返された。

    ◇

 このたびの台風19号では、東日本を中心に多くの方が犠牲を強いられました。あらためてお見舞い申し上げます。あわせて地球規模での深刻な環境異変を憂慮します。


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横尾で。朝から曇天が広がっていた

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徳沢園にもテント村ができていた

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河童橋から奥穂を望む

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カールへの旅・錦繍を求めて(中)~北ア幻視行 [北アルプス幻視行]

カールへの旅・錦繍を求めて(中)~北ア幻視行

 

 周囲のごそごそする音で目が覚めた。まだ日は出ていなかった。起きだして、カールの底部へと向かった。モルゲンロートを見るためだ。宿をとった涸沢ヒュッテの展望台は人でいっぱいだった。1010日(木)の朝が始まった。

 カールの底には三脚が並んでいた。もちろん、モルゲンロートを撮るためだ。私も一眼のミラーレスを取り出し、構えた。予報通り、この日も快晴の空が広がった。背後の山越しに朝日が差し始めた。奥穂や北穂の岩稜帯が赤く染まった。

 一つだけ、後悔があった。最後まで迷った17-35㍉のズームを、結局自宅に置いてきてしまったことだ。10㌘でも荷物を軽くしたい、との思いからであった。しかし、目の前の光景を見ると、もっと広角が欲しかった。17㍉どころか、12㍉が欲しいと思うほどだった。できることなら、奥穂と北穂のピークを一枚の写真に収めたい。しかし、かなわぬ願いだった。

 朝日があたる穂高連峰を、一つのショーを見るように堪能した後、パノラマコースへ向かった。以前、涸沢から屏風の頭までを往復した際、涸沢の全景が眺められるポイントがあることを記憶していたからだ。

 15分ほどでたどり着くと、先客がいた。カールの全景は見えるが、左下に山の影が残り、気になった。影はなかなか消えなかった。この日は早い昼食をヒュッテでとり、横尾まで下りることにしていた。そのため、あまり長くは待てなかった。やむを得ず、山が影を落とすカールにレンズを向け、シャッターを切った。まあ、これはこれで朝の風景だとわかるというものだ。

 紅葉は思った以上に、見事だった。「10年に一度」と評する声もあった。そうかもしれない。ただ、もう数日早ければもっと鮮やかだっただろう、という思いもどこかにあった。しかしそれは贅沢というものだろう。

 午後はのんびり、横尾まで下った。ナナカマドがきれいだった。振り向けば、穂高の岩稜が見下ろしていた。正面には屏風岩がそびえていた。見飽きることはなかった。奇跡の快晴は終日続いた。

 

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モルゲンロート。左端のピークが奥穂

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言葉を失うほど見事な涸沢の紅葉

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「錦繍」をまとう北穂

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常念の方角。右は屏風の頭

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パノラマコースから涸沢を望む。手前は涸沢ヒュッテ

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パノラマコースから北穂を望む

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パノラマコースから奥穂のピークを望む

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午後はゆるゆると下った。前方は紅葉と屏風の頭

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振り返れば奥穂の岩稜帯

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涸沢ヒュッテと涸沢小屋の分岐も見事な紅葉

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カールへの旅・錦繍を求めて(上)~北ア幻視行 [北アルプス幻視行]

カールへの旅・錦繍を求めて(上)~北ア幻視行

 

 「美しい紅葉」全国ランキングをやると、必ず1位になる地がある。北アルプス、穂高に抱かれた涸沢である。一度はシーズンに訪れたいと思いながら果たせないでいた。そろそろ体力的に不安な歳である。一念発起、かの地へ向かうことにした。

 決心はしたものの、日程はなかなか決まらなかった。9月下旬から10月上旬にかけて、毎週のように台風が来襲したためである。長期気象予報と紅葉に最適な時期を見定め、日程を確定させたのは、旅立つ前日だった。

 10月8日(火)に出発、松本に宿泊。広島を出てその日のうちに横尾まで足を延ばさなかったのは、横尾山荘が満室だったからだった。とりあえず松本市内に宿を取り、翌9日(水)早朝に上高地に向かい、そのまま涸沢まで登り切ることにした。コースタイムで正味6時間は、歳からすれば冒険ではあった。

 気象予報で確認していたが、上高地に着いたころ、空は見事に晴れていた。涸沢に滞在する9、10の両日は絶好の晴れ間が広がるはずだ。

 横尾には午前10時過ぎに着いた。いいペースだった。昼飯のカレーライスをとり、涸沢へ向かった。しかし、本谷橋から先は本格的な山道になる。途端に足が重くなった。でも、いくら何でも夕方までには着くだろう。気楽に構えた。走るように軽快に登る人もいれば、鈍牛のごとき足運びの人(私のことである)もいる。途中、目を上げると、はるか先に白く輝くカールと黒い岩稜、そして錦繍の一端が望めた。



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河童橋から奥穂を望む。見事な青空だ

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早朝の明神館は既ににぎわっていた

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明神岳

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朝陽がまぶしい徳沢園

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横尾から。左に前穂の東壁が見える

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横尾山荘。ここで早い昼食をとった

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屏風岩が迎えてくれた

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本谷橋。昔は本当に丸太一本の橋だった

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涸沢と前穂の稜線を望む

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振り返れば、紅葉の屏風岩

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