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中国山地幻視行~大山・ただいま工事中 [中国山地幻視行]

 
中国山地幻視行~大山・ただいま工事中

  

 夜中に寝袋を這いだして、うちわを持ってこなかったことを悔やんだ。蒸し暑い。多分、台風10号の置き土産であろう。眠れないまま明け方を迎え、一気に気温が下がったすきに2時間は寝ただろうか。時計を見ると、5時をわずかに回っていた。テントを出て空を見上げた。雲が厚く張り付いていた。風はない。そのころには前夜の蒸し暑さが戻っていた。

 8月18日、大山。遠征を前に、体力と相談するためこの山を選んだ。

  深い樹林帯に階段状の道が続く。距離は3㌔と長くはないが、傾斜はかなりである。頂上までの標高差900㍍。それにしても、蒸し暑さは尋常ではなかった。シャツはすぐ濡れ雑巾のようになり、帽子のひさしから汗が滴った。5合目を過ぎるころにはよれよれであった。6合目まで行けば、日本海と北壁を同時に望める絶景が待っている…。
 しかし、6合目はこれまでと全く違う光景だった。コンクリート製の避難小屋はなく、金網をめぐらした工事現場だった。その上部に、わずかに北壁が見えた。降りてきた人に聞くと、頂上付近もほぼ同じ光景で、山頂付近は立ち入り禁止だという。おまけに朝からガスが立ち込め、眺望はきかないらしい。
 ネットで状況を確認しておけばよかったなあ…。気力はなえ、ここまで苦労して持ってきたノンアルビールを、悔恨とともに飲み干した。あとは下るだけだ。
 登山口付近の阿弥陀寺まで下り、ベンチに座って食べ残した握り飯をほおばった。わずか3㌔の登りを我慢できないわが身に、老いを感じざるを得なかった。

 老いの身を嗤うているか蝉しぐれ

 お粗末。今年の遠征はやめておこう。誰かに迷惑をかけそうだ。

※帰宅後、大山町役場に問い合わせたところ、頂上小屋移転・改装と6合目避難小屋の改装工事は今年いっぱい続き、来年度も2期工事が予定されている。頂上碑は後背地が崩壊し始めているため現在の位置より東側に移すという。そのため、山頂付近は現在、立ち入り禁止になっている。頂上小屋の外回りが今年中に完成すれば、来年には山頂への立ち入りが可能という。でもこんなこと、新聞もテレビも流していなかった気がするな。 

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夏山登山道入り口。ここから山頂まで3㌔

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6合目。見慣れたコンクリ製の避難小屋はなく、工事現場と化していた

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ザックは遠征用の大きめを持って行った

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これも大山整備計画の一環だろう。荷揚げ用リフトの軌道が敷かれていた

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たかが3㌔、されど…

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ソバナが咲いていた

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ヤマジノホトトギス。カメラに収めていると「珍しい花ですか」と聞かれた。
「この辺ではよく見かけます」と答えた 

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中国山地幻視行~高岳・夏草茂る山頂は360度の展望 [中国山地幻視行]

中国山地幻視行~高岳・夏草茂る山頂は360度の展望

 

 8月2日、久しぶりに高岳(1054㍍)に登った。広島・島根県境にある。すそ野の広い、ほぼ三角錐をしており、山頂から360度の展望である。このブログで前回の記録を見ると2015年夏。4年ぶりの登頂であった。

 聖湖そばの路肩に車を止め、杉林に入っていく。山頂を除いてほぼ全コース樹林帯である。そのことも、今の季節この山を選んだ理由の一つだった。カンカン照りより木陰の道がいい。しかし、歩き始めてしばらくは谷の底を歩くため、風がなかった。聖湖が見下ろせる尾根筋に立って初めて恩恵を受けた。

 だいたいは緩やかなアップダウンだが、山頂直下は急登だ。胸突き八丁というやつ。汗を滴らせ、下を向いてしばらく我慢すると、樹林が切れて空がのぞいた。

 山頂は深い夏草に覆われていた。前回登ったときはきれいに刈ってあったが、そこまでの期待は贅沢というもの。「高岳」と書いた標識は健在だった。そこからぐるりと見渡した。東の方角に臥龍山と麓の八幡湿原、南隣には深入山、視線をさらに南に向けると恐羅漢山。その左手前の聖山からこの高岳まで縦走路が続いている。そして臥龍、深入の足元には聖湖。

 山頂には日陰がなかった。その代わり、風が間断なく吹き渡っていた。夏草の深いしげみが揺れた。

 セミの声をシャワーのように浴びて下った。しかし、時にセミの声がピタリとやむ瞬間があった。あれはなんなのだろう。不思議を通り越して不気味でさえあった。

 

 

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深い樹林から開けた山頂に飛び出す

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深入山

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臥龍山

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恐羅漢山。左は聖山

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「高岳」の標識は夏草に埋もれていた

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聖湖。左の山は臥龍、右は深入

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登山道入り口。この橋はいつのころからか、設けられた。以前は沢の左岸をしばらく詰め、渡渉した。大雨の時など難儀した
 

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