中国山地幻視行~大峰山・彼岸花を見に [中国山地幻視行]
中国山地幻視行~大峰山・彼岸花を見に
花といえば可憐、清楚、華やか、といった形容詞がまず浮かぶ。しかし、この花に限ってそんな言葉は思いつかない。まがまがしい、といっては言い過ぎかもしれないが、毒のある美しさである。かといって嫌いではない。紅蓮の宇宙を思わせるたたずまいを年に一度ぐらいは見たいと思って出かける。
曼珠沙華。別名彼岸花。9月20日、訪れたのは広島市近郊の大峰山である。例年、季節になると麓いったい赤く染まる。しかし、今年は様子が違った。少し早かったのか。それとも遅かったのか。路傍にぽつりぽつりと咲いているだけだった。
◇
頂上まであと少し。息を切らして佇んでいると、若い男性が勢いよく追い越していった。すれ違いざま「結構急な山ですねえ」というので「あと20分ぐらいですよ」と返しておいた。それは掛け値なしの時間である。間もなく急登は終わり稜線歩きに移る。後はルンルン気分である。
頂上の大岩に上がると、先ほどの男性と別の男性が会話を交わしていた。頂上は狭いので、聞くともなし内容は聞こえてきた。
「朝方、三倉岳に登ったんです」と若い方。
「へえ、それからここへ。元気ですねえ」と別の男性。その男性は聞かれるまま、芸北の山々の説明を始めた。十方、吉和冠、深入山…。
ひとしきり会話を交わして、若い方はそそくさと下りていった。
「なんとも元気ですねえ。昼飯も食わずに下りていっちゃった」
男性が私に語り掛けた。それからひとしきり山談議。簡単な昼飯を食い終わり「ぼちぼち下りますわ」と別れを告げると、その男性も下山支度を始めた。向こうもこちらも、なんとなく気があったのだろう。つい一緒に山を下った。会話が弾んだわけではない。なんとはなし、である。駐車場まで戻ると、どちらからともなく「また、どこかの山で会うといいですねえ」と切り出した。定番のそれ、というわけでもなく、自然に出た言葉だった。
彼岸花という通称がなければ、イメージは異なるかもしれませんね。
ルンルン気分の稜線歩き、下界のコロナ禍が遠のきますね。!(^^)!
by Jetstream (2020-09-22 20:01)
彼岸花、今頃か。我が家でも、いつからか彼岸花が咲くようになったが、未だ蕾もない。それにしても、写真に芸術性が加わるようになったね。特に1枚目。
by BUN (2020-09-23 00:57)
≫Jetstream さん
確かに。私は「曼珠沙華」のほうが好きで、こちらをよく使います。このほうが、この花のイメージをよく表しているように思います。
≫ BUN さん
「芸術性」など程遠いと思っていたので、うれしいです。
by asa (2020-09-23 14:34)
何事もアートな気持ちが大事です。デザインを考える、なんでもないものにも新しい発見をする。花を見る、きれいに撮りたいと思うだけじゃ不十分です。花だけ見ていてはダメです。
あなたの文章はすでに芸術(標準以上の術)だと思います。
by BUN (2020-09-23 23:50)
≫BUNさん
「アート」などということを気にしていると文章がいやらしくなりそうなので、話半分に聞いておきます。
by asa (2020-09-24 15:01)