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北アルプス幻視行~槍ヶ岳を見にいく(中) [北アルプス幻視行]

北アルプス幻視行~槍ヶ岳を見にいく(中)

 

 急登を登り切り、特徴的な台形状の山容にわずかに残る踏み跡をたどった。ガスの中から岩に囲まれ城塞のようなたたずまいの山頂が現れた。

 8月27日、双六岳。あいにく山頂周辺はガスに包まれていた。それでも、しばらく待った。ここから見る槍ヶ岳は、北アルプス随一の美しさである。双六の「鈍」な山容と、槍の「鋭」な山容とがコントラストを描く。30分は待っただろう。双六小屋方面だけでなく、黒部五郎小屋や三俣山荘から、次々と登ってくる。「あら、真っ白ね」という声も聞こえる。雪ではない、ガスのことである。

 あきらめて下山にかかった。山頂のすぐ下、双六の台形状の地形が広がるあたりでガスが切れ始めた。足を止めて待ったが、槍を取り巻く白い緞帳が上がることはなかった。

 長期予報では、翌日から数日雨だという。自宅を出た時に比べ、天候は下り坂のようだ。迷いに迷ったが、結局降りることに決めた。だが、このまま降りるのも後ろ髪を引かれる思いである。双六小屋で整えたザックを背負い、鏡平小屋に途中下車を決め込んだ。今日の夕か、明日の朝か、もう一度槍を見ることはできないか。わずかな期待を胸に秘めてのことだった。

 夕刻迫るころ、小屋の外が騒がしくなった。何事だろうと窓の外を眺めると、あたりを包んでいたガスが切れていた。槍から穂高への山並みがくっきりと浮かんでいた。カメラを手に、鏡池に向かった。すでにそこは人であふれていた。

 翌日、小池新道を下った。終日雨だった。

 

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双六岳は終始ガスの中だったが、隣の鷲羽はよく見えた

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夕暮れ迫る槍穂のキレット(鏡池から)

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夕暮れ迫る槍ヶ岳・南岳

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ガスの切れ目からのぞく槍ヶ岳

 


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