中国山地幻視行~主役は青い空・三倉岳 [中国山地幻視行]
中国山地幻視行~主役は青い空・三倉岳
主役は、青い空であった。雲一つない空。おまけに日曜日とあって、山は混雑していた。5月20日、久しぶりの三倉岳。調べてみたら昨年の初秋10月以来であった。
快晴とあって日差しは強かったが、林間の木陰に入ると空気が冷たい。湿度は低いようだ。急登を辛抱し、中岳までたどりつくと、後からどんどん人が押し寄せてきた。誰もが「すごいなあ」と感想を漏らしていた。こちらは何度も登っているので感激も薄れたが、初めて登る身には「すごい」景色らしい。確かに、大岩に立って見下ろせば、急崖に足がすくむ。
中岳から夕陽岳へ向かう。ストックはザックに取り付け、革の手袋をはめた。長い鎖場があるためだ。前を行く若者が引き返してきた。「どうしたの」と聞くと、「怖いから」という。「大丈夫だよ。たいしたことはないから」と励ましたが「こういうのはダメなので」と引き返していった。残念だな、もっといい景色が待っているのに、と思ったが、引き留めるすべはなかった。
夕陽岳の最も眺めのいい大岩は、幸いなことに空席だった。これほどの混雑なのに、幸運というほかなかった。早速陣取った。昼食の支度をしていると、頭上に飛行機雲が伸びた。西へ向かっている。定期航路のそれとは思えなかった。しばらくすると、別方向からもう一本。おそらく米軍岩国基地の訓練機であろう。青い空に一筋の白い雲が伸びるのは、きれいなものだ。こんなことを言うと反対運動の人たちから叱られそうだが。
下山途中、5合目の大岩にも上った。降りがけ、白い花が目についた。シャリンバイのようだが、違うかもしれない。ご存知の方は教えてほしい。
登山口まで戻って見返すと、山頂の上にはやはり朝方見たのと同じ青い空が広がっていた。
コメント 0