中国山地幻視行~雪崩跡に悩む・深入山 [中国山地幻視行]
中国山地幻視行~雪崩跡に悩む・深入山
準備に手間取り出発は午前10時近くになった。予報は晴れだったが、うす曇りで小雪が舞っていた。山の天気は気まぐれだ。風はない。気温計を持ってこなかったが、おそらく氷点下だろう。雪面は固く締まっている。スノーシューは壊れているので、きょうはカンジキだ。サクサクと小気味いい音を立てて刃が雪に食い込む。1時間ほど、気持ちよく歩いた。
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2月23日、深入山(1153㍍)。駐車場から見上げて、気になる箇所があった。雪崩が起きているらしく、ブッシュがかなりの面積で顔を出している。しかし、地形の関係で全体像が分からない。とりあえず、歩きやすい急斜面を登った。
雪崩跡の上部に着いた。右手の斜面にはブッシュとまだらの雪面が混在している。雪崩の余波ともいうべき亀裂が行く手の斜面を横切っていた。近づくと、ギャップは人の背丈ほどある。亀裂の中はグサグサで、越えるのは困難に思えた。エベレストのアイスフォールのミニチュア版のようである。もちろん、亀裂の中に落ちたからといって脱出不可能ではないだろうが、カンジキをはいた足が途中に引っかかれば苦労しそうだ。
そんなわけで、ブッシュがのぞく斜面にコースをとり、雪面とのギャップが少ない個所を探して登った。幸い、行く手の小ピークに近づくにしたがって、風が吹き付けるせいか雪は浅くなっているようだった。こうして、ブッシュとしばらく格闘の後、再び雪面に戻った。泥と草で滑る斜面から解放されたが、尾根筋に出たせいで今度は強風に悩まされた。しかし、小ピークを越えてこの山の頂上が顔を出せば、モチベーションも上がる。
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冬季のこの山の魅力は、この小ピークあたりから眺めた山頂の美しさにある。青い空がバックにあればいうことはない。しかし、この日の頂の北西には、無残な傷跡が刻まれていた。ここにも雪崩の跡である。この山は毎年、冬に登っているが、これほどの雪崩跡を見たことがない。なぜこんなことになったか。
推測するに、①今年は例年になく雪が多かった②その割に暖かい日が多く、寒暖差が大きかった③そのため融雪量も多く、溶けた水が積雪の下を流れて急斜面の雪を滑らせた―こんなことではないか。
そんなことを考えながら、ひたすら、山頂への斜面を登った。雪崩跡のギャップと急斜面に悩んだため、到着は正午近くになっていた。
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山頂付近は、予想に反して雪は少なかった。この山の頂は360度の展望がきく。その分、強風にさらされる。おそらく、日本海から直接くる。この風が積雪を阻んでいるのではないか。この日も、山頂付近に吹き荒れていた。あまりの寒さに、眺望を楽しむ間もなく帰途につかざるを得なかった。下山途中、小ピークから振り返ると、山頂付近には青空が広がっていた。
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