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迫力ある山岳シーン~映画「神々の山嶺」 [山の図書館・映画館]

迫力ある山岳シーン~映画「神々の山嶺」


 夢枕獏の原作を映画化した。上下2巻の長編である。原作ではマロリーのカメラ(コダック)をめぐる謎、カトマンズのディープな街の雰囲気、すべてが入念に描かれている。しかし、映画ではそれらをそぎ落とし、エベレストに挑み続ける孤高のクライマー、羽生丈二(阿部寛)と山岳カメラマン深町誠(岡田准一)の人間関係と、その舞台となるヒマラヤのシーンに多くを費やしたのは、「小説」「映画」というメディア媒体の違いを考えればやむを得ないところか。

 マロリーは1924年、エベレストの頂稜近くで目撃されたのを最後に、姿を消した。遺体発見は75年後、1999年のことだ。夢枕の原作本はその2年前に刊行されている。マロリーが目撃されたのは登山中だったか下山中だったか。そこが大きな分かれ目になっており、それは今も変わらない。登山史上最大のミステリーを巧みに織り込み、山に常人ならざる情熱を傾けたクライマー列伝をベースにしながら紡ぎだされたのが、この「神々の山嶺」である。

 ちなみにいえば、主人公の羽生には「ホキ勝」こと「森田勝」が、彼のライバルである長谷常雄には長谷川恒男が投影されているといわれている。森田は「谷川岳・三スラの神話」と呼ばれた男であり、そのことも映像で出てくる。K2での反乱のエピソードなど、無頼・破滅型の印象が強い。映画の中で羽生が挑む南西壁は山学同志会の小西正継が挑んだことがあり(途中で撤退)、そのエピソードも組み込まれていると思われる。

 これだけの舞台装置を整え、後は迫力ある山岳シーンが続く。それ以上に語ることは何もない。惜しいのは、山岳シーンがメーンであるため、尾野真千子(山で死んだ男の妹を演じている)という名優を得ながら力量を発揮する場面があまりないことである。

神々の山嶺.jpg


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山子路爺

手元に有りますが、まだ手つかずです。

by 山子路爺 (2016-03-21 17:28) 

asa

≫ 山子路爺さん
原作はなかなかごついです。でもだいぶ前に読んだので、細かいことは忘れました
by asa (2016-03-28 16:21) 

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