中国山地幻視行~雪の恐羅漢 [中国山地幻視行]
中国山地幻視行~雪の恐羅漢
恐羅漢に3月19日、登った。平地ではこの日、気温17、18度と春の到来を思わせる陽気だったが、ここにはまだ冬の名残があった。
残雪は思ったより多かった。ゲレンデはすべて滑走可能だったが、リフトは半分だけ動いていた。幸い、登山口のある側はリフトが止まっていたので、ゲレンデ横をせっせと登った。それでもゲレンデ最上部から登山道のすぐ横まで滑走してくるスノーボーダーやスキーヤーがいる。こんなシチュエーションはあまり経験がないので、変な気分だ。
ゲレンデ最上部にたどり着き、一息ついていると下から声がした。リフトを降りたばかりのスキーヤーだ。
「頂上までどのくらい?」
「雪があるから1時間半はかかるでしょう」
「えっそんなもので行けるの?」
驚いた表情だった。雪がなければ、このコースなら1時間ぐらいだ。そんなものだろう。
ゲレンデを抜けると、足跡がなくなった。雪は新しい。まっさらな雪上を歩くのは気分がいいが、ルートが分からない。しかし、とにかく上をめざせば夏焼峠からの登りルートと交差するはずだ。林間を抜け、なんとかそのコースを見つけた。あとはなだらかで広い斜面を登ればいい。空は青い。雪面がまぶしく、手袋もウインドブレーカーも不要だ。雪の恐羅漢を訪れて、一番気分がいい瞬間である。
頂上を示す標識は、上部50㌢ぐらいが雪の上にあった。雪がなければ人の背丈より大きい標識だから、積雪は1㍍以上はあろう。
下りはカンジキを着けて、自由きままに下りた。これが失敗だった。下りの尾根筋を間違えてしまい、自分の所在地を一瞬だが見失ってしまったのだ。セオリーに従って沢筋からいったん近くの尾根に登り、周囲を眺めると、二つ先の尾根に稼働するリフトの先端が見えた。こんなときは登りのルートを丹念にたどるべきだったのだ。短距離だったのでこの程度ですんだのである。
スノーボーダーの横を登る |
ここを登り切れば頂上 |
振り返ればこんな感じ |
ふだんは人の背丈よりも高い山頂の標識 |
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