中国山地幻視行~松の木峠から吉和冠 [中国山地幻視行]
中国山地幻視行~松の木峠から吉和冠
そろそろ、山の黄葉も見納めだ。最後にどこへ行ってみるか。これまで何度も訪れながら、タイミングが合わなかったあそこ、あそこはどうだろう。
11月8日、広島・山口県境にある松の木峠から吉和冠山(1339㍍)を目指した。峠の標高は776㍍。差し引き563㍍の登りだ。実は、この山の一般ルートは他にあり、峠から登る人はそう多くない。なぜかといえば、距離が長いからだ。西中国山地には比較的多いのだが、この山は非対称のかたちをなしている。北アの白馬岳を想い浮かべてもらえばいい。急傾斜と緩斜面でできている山なのだ。一般ルートは、しんどいが距離が短い。峠からの登りは、傾斜は緩いが距離が長い。
ススキが風に揺れる高原の一角に車を置き、登山道へ踏み込む。実は昨年11月3日に同じコースをたどっている。黄葉はベストタイミングだったが、この近辺では珍しく群生するカラマツが少し早かった。昨年より5日遅れ、さてカラマツはどうだろう。
それは青空に、早朝の日差しを浴びて輝いていた。やっと出会えたカラマツの黄葉である。誇らしげにそびえるカラマツを左手に見ながら進む。道は落葉で覆われ、黄金のシャワーのようなブナの黄葉が目の前に広がる。標高1000㍍近くまで、この景色が楽しめる。1000㍍を過ぎれば、わずかに残る枯れ葉が風に揺れて、迫りくる冬の荒涼が濃さを増してくる。
頂上に着いたのは、登山口から2時間強たったころだった。やはり距離が長い分、時間がかかる。一般ルートより、30分近く余計にかかっただろうか。展望のきくエリアに向かうと、女性の二人連れがいた。昼食の準備をしながらつい、山の話になる。
どこから登りました?と私。
温泉のある方から。
どうでした?
もう終わってました。
―黄葉のことである。
そうでしょうね。
―正面には恐羅漢山がどっしりとある。その向こうに臥竜山。
最近、どちらかの山に行かれました?と女性。
ええっと。あそこに見える恐羅漢に、臥竜山に、比婆山に。この10日間ぐらいの間に…。
へえ。どうでした?
どこもあまりきれいじゃないですね。ことしは出来が悪いみたいです。
車を置いているので、元の場所に降りなければいけない。頂上には数人がいたが、往復のルートで出会った登山客はいなかった。登りの途中で、地元の人らしい数人が山道の周辺のササを払っていたので「御苦労さま」と声をかけて追い越しただけだった。秋晴れの空の下、静かな、静かな山行であった。
黄葉のトンネル |
カラマツの黄葉 |
カラマツの黄葉 |
吉和冠頂上から望む西中国山地。左が恐羅漢山、正面が十方山 |
下山途中で |
下山途中で |
登山口近くの標識。ここが山口との県境 |
昨年撮った吉和冠。左右非対称の山だ |
カラマツというのは東北や信州の高地だけかと思っていましたが、中国地方にも生えているのですね。意外でした。
by Umi-Bozu (2012-11-09 19:18)
≫Umi-Bozuさん
このあたりで、唐松が映えていることで知られる山がいくつかありますが、多くはありません。ここ(松の木峠)は比較的多いところだと思います。
by asa (2012-11-09 19:35)
素晴らしい黄葉ですね。タイミングも
ばっちりだったのではないでしょうか。
唐松の黄色い葉がハラハラと舞うのも
また綺麗です。
by ken_trekking (2012-11-13 20:40)
≫ken_trekkingさん
西中国山地では「紅葉」はあまりなく、「黄葉」が多いですね。
カラマツの黄金いろの落葉は特にきれいです。
by asa (2012-11-15 20:09)
色付いた木々
降り積もった落ち葉のクッション
良いですねぇ。
by 山子路爺 (2012-11-22 12:32)
≫山子路爺 さん
でも、山はこれから冬模様ですね。そろそろ雪山トレッキングの支度をしなければ…
by asa (2012-11-24 09:10)
黄葉も終わりのようですが、遠くまで望めて気持ちよさそうですね。 カラマツの幹の感じがいいです。
by おど (2012-11-24 12:15)
≫おどさん
黄葉も終わりましたね。
雪山の季節がもうすぐ…。
by asa (2012-11-30 21:21)