山の図書館~「雨過ぎて雲破れるところ」(佐々木幹郎著) [山の図書館・映画館]
「雨過ぎて雲破れるところ」(佐々木幹郎著) |
変な言い方だが、全編の基調は「まじめに遊ぶ」ことの追求である。そのことによる解放感。だから、例えば焚き火一つとっても、こんな風になる。
「風には『風の目』というものがある。必ずそれは燃え上がった焚き火の、木を組んだ隙間の一点だけにあるから、焚き火の炎の形と向きによって、風の目を見つけるのだ。その一点をめがけて、団扇でゆっくりとあおぐ。そこを外して、他の方向から団扇を使うと、いくら力強くあおいでも、かえって火は弱まってしまうのだ」
手に入れたカジカで骨酒をつくる。焼き具合にこだわり、天日に干す。
「一口飲んで、全員が感嘆の声をあげた。なんというふくよかな甘さなのだろう」
「雨過ぎて雲破れるところ」(みすず書房刊) |
中原中也研究で知られる著者とフォークシンガー小室等との交流では、中也の詩「サーカス」に小室が音をつける。「これまで聴いたことのない、やわらかな『サーカス』」で「一番いい!」と叫び「まるで二十年ほど前からの友人だったような感覚」に陥り、明け方まで飲んで騒ぐ。装丁の帯にある「詩人のコミューン」が出現する。
東京芸大の学生が山小屋を訪れてコンサートをしたときのこと。村の子供たちも参加する。翌日、子供たちが芝生で水を掛け合って遊んでいた。服が脱ぎ捨ててある。「少女たちは音楽とダンスですっかり身体を解放され、最後は裸になってしまったのである」
タイトルは中国の「雨過天晴雲破処」から。雨上がりの空の新鮮な青。青磁の理想の色を表す。アジアを放浪する視線の一端が分かる。
2009-12-12 17:20
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コメント(2)
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まじめに遊ぶ。。なるほど!!と思ってしまいました。
by 水郷楽人 (2009-12-13 09:18)
水郷楽人さんありがとうございました。
本の装丁にあるように「よぼよぼの老人になっても」遊びの精神を忘れないようにしたいものです。
by asa (2009-12-16 09:28)