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中国山地幻視行~縦走路の影法師 [中国山地幻視行]

 中国山地幻視行~縦走路の影法師

  聖山(1113㍍)から高岳(1054㍍)を縦走した。聖山はお椀をかぶせたような形。登山路の取り付きは急だが、山頂付近は平らだ。うっそうとした雑木林で見通しはきかない。標高の最高地点も林の中にある。やや西寄りに、かつては展望のきいたポイントがあるが、ここも今は雑木が生い茂ってしまった。広島県の最高峰、恐羅漢山が見はるかせたはずなのに、面影はまったくない。よじ登れば遠くの山々を見渡せた大きな岩も、伸び放題の草に埋もれてしまった。
 登山路に取り付いてすぐ、男性2人連れが下りてきた。しばらく行くと4、5人のグループ。「一人ですか」と声をかけられた。「先ほどの2人は、クマの糞を見つけて、そしたらササやぶがガサガサ音を立てるので怖くなって下りたそうですよ」。「じゃあ、みなさんの後を付いて行きましょう」と言いかけたら「快速が通ります。よけてください」とリーダーらしき人。つい「それではお先に」と言ってしまった。しばらくして今度は中年男女の2人連れ。黙って道を譲られ、また先を行ってしまった。こうなると周りは誰もいない。「クマよけの鈴は…」。しまった忘れた。
 仕方なく、ラジオを最大音量にして胸のポケットに入れた。といっても山の中。放送の内容はたまにしか分からない。「ザー」と雑音がするだけだ。それでもないよりましか。聖山山頂から縦走路に入ると、いよいよ人気はなくなった。クリの実がそこここに散乱している。この実が落ちる音か、時折ササやぶが「ガサリ」と音を立てる。そのたび、飛び上がりそうになる。神経がとがっている。
 聖山を出てすぐの縦走路は、山の北側にあるため日が当たらず、なんとなく陰惨としている。春先も、この付近だけ雪が残ることが多い。何回かのアップダウンを繰り返して高岳に近くなると、今度は縦走路が南側に向くため日が当たり、開放的な雰囲気になる。気のせいか道も広くなり、風も抜け心地よい。縦走路に入って40分を過ぎたころ、右手に聖湖が見え始める。位置関係が把握でき、なんとなくほっとする。それまでは見通しのきかない林の中をひたすら下を向いて歩く気分なのだ。

 2009 10 04_聖山―高岳_0521_edited-1.jpg

奥匹見への分岐

              

 奥匹見、すなわち島根県側に下りる道との分岐点が現れる。大きな標識もあって分かりやすい。ここで一休み。少し下って、あとは登り一辺倒。目の前に青い空がぽっかりと見え始める。まるでトンネルの出口のようだ。あそこまで行けば、高岳頂上だ。聖山と対照的に、高岳は三角形をしている。頂上からの展望は抜群…と言いたいが、ここもまた雑木が伸びて眺望は年々悪くなっている。

 2009 10 04_聖山―高岳_0522.jpg

 高岳の頂上だ



 なぜだろう。近年は雑木が伸び放題の山が多い。手入れをするための人手がなくなっているためか。もっとほかの理由があるのだろうか。この山も、広々とした山頂から360度の眺望が楽しめたはずなのに。

 2009 10 04_聖山―高岳_0530.jpg

 頂上からの眺め。聖湖の向こうに深入山


 それから、みなさんこの時期の単独縦走はくれぐれもクマに気をつけましょう(反省)。
 聖山登山口(50分)聖山山頂(50分)奥匹見への分岐(30分)高岳山頂(40分)高岳登山口

 2009 10 04_聖山―高岳_0537.jpg

 小さな営み


  


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